二十六日
アルバイトの最後の出勤だった。
二年半ほど働かせていただいた。
個人経営のこぢんまりとした店であり、店主やその奥さん、そして店長がいつも優しかった。みんな飛んでていつも笑っていた。
夜に大学の友人二人が来店してくれ、最後の拭きあげとレジ締めを終え、店主と最近あたらしく入ったSさんと五人で飲みに行った。いつものせっちゃんだ。
最後まで良くしてもらって幸せ者と思う。正社員として就職したかったな。でも様々にことか進んでしまっている。東京に帰って来るときも、食べログミシュランのガイドは必要ないかな。

二十七日
引越をした。引越と言っても、部屋にある荷物を実家に搬入するという作業であり、まだあたらしい部屋には移らない。
それでも、次第にただの空間になっていく部屋を見ていると、忘れたくない記憶が次から次へとよぎってくる。昨日まではなんとも思わなかったけれど、どういったわけか、寂しいし、悲しい。すこしうるっときてしまう。東京に配属されたとしても、この部屋に戻ってくることは難しいだろう。けれどもこの部屋で起きたことしたことは絶対に忘れたくない。村上春樹は引越が好きだとどこかに書いていたけれど、自分はあまり好きではない。面倒くさいしね。思い出というやつがセンチだし。だけど愛着を強く感じる瞬間が引越のときに限定されるから難しい。いいや、最後には愛着を感じることができて幸せだったということだ。